向修一君の2000年6月分レポート

この留学も、あっという間に終わってしまいました。これまでの一年は JIC の方々のお力があってのものであり、感謝を忘れることはできません。今後はこれからの奨学生のために、自分の任務を果たしたいと思います。

この一年間が、これからの人生の中でどのような意味を持つことになるのか、現時点では予測もつきませんが、今の自分にできる範囲で総括し、ご報告したいと思います。

まず、学業ですが、これは残念ながら成功したとは言えないでしょう。帰国中にお目にかかった室賀先生の、大学の成績とその後は必ずしも比例しないという趣旨のお言葉を、心のよりどころとしたいと思っております。

し かしながら、今後のキャリアに道筋がついたことは、おそらくこの一年間で最大の収穫です。留学前は、いや、留学の半ば過ぎまでは、「とりあえず IT関係の修士号を取る」という極めて漠然とした短期的な目標しか持っていなかったのですが、今年の 2 月にたまたま運よく外資系の IT 企業に就職することが決まり、自分の将来への方向性が固まってきた気がしています。それは単にこれからの職業選択ということにとどまらず、自分の社会に対 する使命感を認識し始めた、というところまで含めてです。

また、この留学の、副産物というには余りに大きな収穫が、今までに知り合えた数 々の友人、恩人です。特に、良識ある何人ものアメリカ人と沢山の話ができたことは、私のなかで見えない財産となるでしょう。それが将来役に立つかどうかは 別として、経験はいろいろできたと思います。

$1,600 で買った車は高速道路で突然止まりました。鹿をひきそうにもなりました。ネズミ捕りにも遭いました。(Urbana の Lincoln Avenue では要注意です!)電話会社の請求書でトラブルがあり、メールで議論したものの結局言いくるめられました。ヤオハン (当時; 現ミツワ) で買って来たウナギを同居人のインド人に食べられました。(もちろん彼にも悪気はないのです。むしろ彼が勝手に食べたことは友情の証明だったと今では思い ます。)多くの教訓が得られましたが、まとめれば “Make no assumptions.” の一言に尽きるでしょう。今では、何事も確かめる習慣を意識的につけているつもりです。

留学当初から、いつかは英語を自然に話せるようになりたいという野望がありました。結論を急ぐなら、これはどうやら一生の課題になりそうです。米国に一年近く住んでみて、進歩の見えない自分に焦りを感じもしますが、実際進歩していないのならばしょうがありません。

こんなところでしょうか。個人的な話ばかりでしたが、最後にここ一年間のChampaign のキャンパスタウンの主な出来事を書いて私の報告書としたいと思います。(情報にはかなり偏りがあります…)

Green St. のランドマーク的存在だった CO-ED シネマは、昨年 7 月に閉館し、今年になってついに取り壊されました。跡地には “600 Technology Plaza” と呼ばれる Beckman Institute に似た建物ができ、レストランや小売店、それにハイテク企業などが入居することになっています。

その向かいに昨年の春、 Gouliard’s というハンバーガー中心のレストランが開店し、評判もよかったのですが、11 月に突然閉店してしまいました。高い家賃が原因との憶測が聞かれました。店長だった Gouliard さんは、最近開店した Downtown Champaign の Farren’s というレストランのキッチンにいるようです。

3 月にキャンパスタウンのバー「Mabel’s」が「女性ダンサーによる大人向け娯楽」を企画するも、学生団体や地元商店主などの反対やそれを受けた Champaign 市条例の改正もあって、中止に追い込まれました。

Champaign の Willard 空港とシカゴの O’Hare 空港を結ぶ American Eagle の路線に、今年中にジェット機が就航します。定期便では初めての就航です。また、Champaign – St. Louis 線を運航する Trans World Express も、飛行機が大型化しました。

Illinois Basketball は Big Ten Tournament では昨年に続いて Michigan Stateに決勝で破れ、NCAA Tournament では二回戦で Florida に破れました。相手はいずれも、今年 NCAA のファイナルに進んだチームです。 (Michigan State が優勝)5 月になって、コーチの Lon Kruger は辞任し、NBA のアトランタ・ホークスのヘッドコーチに就任しました。後任探しが急がれています。

Illinois Football の春のキャンプを締めくくる Spring Game (紅白戦) が4 月 15 日に行なわれ、QB の Kurt Kittner はパスの正確さにやや課題を残すも、随所でロングパスを決めるなど、全体として非常に期待の持てる仕上がりでした。今年の秋は、ホームに California と Michigan を続けて迎えるなど、楽しみな日程になっています。

以上

向修一君の2000年1月分レポート

わたくしは、JIC 派遣留学生として昨年から今年にかけてお世話になっております、向 修一と申します。昨年の 3 月に東京大学理学部地球惑星物理学科を卒業し、4 月から都内にある IT 関連の小さな会社でアルバイトをしていました。U of I では主にコンピュータ・サイエンス (CS) の基礎を勉強して、帰国後にその分野で大学院へ進学する準備とし、同時に英語力を大幅に延ばそうと目論んでおります。

夏学期は、CS の科目を 2 つと、中国語、それに ESL を受講しました。 CS は「データ構造とソフトウェア・プリンシプル (CS 225)」、「オペレーティングシステム(CS 323)」の 2 つです。

ご 承知の通り、U of I の CS Department は、米国内でも最も入学の難しい学科の一つです。そこで学ぶ機会を頂けたことは、この上なく恵まれたことだと感謝しております。授業で周囲を見渡す限り、 学生はアジア人の比率が比較的に高く、また 9 割以上が男性であるのが特徴です。(余談ながら、これは直感的には理解可能でも、実際には社会的要素の絡み合った、深い問題だと思います。)

CS の授業は、非常に「実践指向」であるという印象を受けました。CS 225 はプログラミング中心の授業で、頻繁に「real world では」という表現を耳にしました。教師も実務経験に基づいた方法論を強調する一方で、学生の側も「授業 (アカデミックの世界) ではこういう扱いをしているが実際の職場ではどうなのか」といった情報を多く期待しているように見受けられました。 CS 323 もオペレーティングシステム理論の授業とはいいながら、先生の専門の関係もあってか、マルチメディア関連の例を盛んに持ち出し、学生の興味にかなり沿った 講義が行われていました。

ずっと Green Street の北側 (理工系キャンパス) にいると息が詰まってしまいそうなので、気分転換に中国語を取ってみました。私が選択したのは漢字をいっさい教えない初習者向けコースで、少人数だったこ ともあり、かなり楽しい経験でした。(中国語が身に付いたかは別として…) 漢字を使わない教え方というのは、日本では得難いに違いない面白い学習形態でしょう。

ESL については、さほど驚きはありませんでした。教授法は全て日本で触れたことのあるものばかりでしたし、(リスニングとスピーキングを強化したかったのにもかかわらず) ライティングの授業を取らされてしまったので、ただ無難にこなしたのみです。

冬 休みは、フロリダにフットボールの試合を見に行ったあと (近年の動向をご存じの方は信じられないかも知れませんが、Fighting Illini が MicronPC.com Bowl に出場し、Virginia を圧倒して、最終的にランキング 25 位に入ったのです) 、Y2K 問題 (?) でチケットが安かったこともあり、日本に帰国しました。(その後に IAP-66を紛失し、学校から FedEx で送ってもらうという失態を演じてしまうのですが…)

春学期ですが、(初めは満員で全然取れなかった) CS の授業が、学期開始後に滑り込みで登録できて、とりあえず一安心といったところです。それから、英語が余り上手くなった実感がないので、もっと使うようにせねば、と思っています。

以上、簡単ですが、近況報告とご挨拶まで。今後ともよろしくお願いいたします。