高田修太さんの2011年10月分奨学生レポート

東京大学工学部4年の高田修太です。10月の奨学生レポートを報告させていただきます。早いもので1学期の半分が過ぎ、既に折り返しとなりました。10月に入ってからは、だんだんと寒くなってきており、冬物のコートが手放せない毎日です。そんな中でも、平気で半袖で歩いているようなアメリカ人を横目に見ながら、体感温度の違いをひしひしと感じております。

東京大学では、社会基盤学を専攻しておりました。社会基盤というと難しく聞こえるかもしれませんが、いわゆる土木工学という分野です。今回、本奨学制度に応募させていただいた理由は、イリノイ大学アーバナシャンペン校が、世界有数の社会基盤(Civil Engineering)における名門校であったから、ということがあります。現在は、Civil Engineeringの講義を中心に工学部の学生として授業を履修しております。講義に関しては、後ほど詳しく述べさせていただきます。

今回の留学が始まる前に、既に何度かアメリカは旅行などで訪れていたこともあり、ある程度勝手は知っているつもりではありましたが、キャンパスライフとなるとわからないことだらけで、現地の人々に助けられながら8月は過ごしておりました。アメリカ行きの飛行機で隣り合った方が偶然イリノイ大学現地の日本人学生で、シカゴのオヘア空港でお話をして、かなり気が楽になったのを覚えております。寮についた当日は、あまりの部屋や寮のエアコンによる気温の低さに辟易し、ベッドのリネンもないまま床に着きました。その日はオヘアからシャンペーンまで乗るはずのバスが1時間ほど遅れて、予想以上の長旅となってしまったために相当疲れていたので、エアコンに凍えながらも熟睡できました。その後、先述の通り様々な人々に助けられながら現在に至ります。

<生活について>
寮は Illinois Street Residence(ISR)のトリプルルームに住んでおります。ルームメイトはアメリカ人と中国人の2人で、かなりインターナショナルです。遊びにくる友人たちも当然アメリカ人や中国人で、非常ににぎやかな部屋になっています。来たるサンクスギビングの休暇では、アメリカ人ルームメイトの家にもう一人のルームメイトと遊びにいく予定です。幸い、彼らはとても良い子たちで、いつもたわいもない話をしながら、わいわいと部屋で盛り上がっています。トリプルルームの良いところは、3人の部屋なので会話が盛り上がることでしょうか…(笑)逆に、悪いところは1人の時間があまりない、ということでしょう。そして、やはり狭いです。2人部屋よりも、1人当たりのスペースは小さくなっています。
ISRという寮は、Engineeringの授業が開かれる建物や、大学の中心地とも言えるUnionにも比較的近く、立地が非常に良い寮です。また、地下にもコンビニのような売店や小さなジム、図書館、プレイルームもあり、かなり気に入っています。毎週水曜日のISRのディナーはAsia Nightといってアジアの料理が提供されるため、その日はあらゆる寮からアジア人たちが料理を求めてやってきているため、大変混雑しています。あまり日本食は出されないのですが、大福が出たときは少し感動しました。

<講義について>
現在履修している講義は以下の通りです。
CEE472 Structural DynamicsⅠ
ENG360 Lecture in Engineering Entrepreneurship
ECE410 Digital Signal Processing
SHS120 Children, Communication, & Language Ability
CEE497 Independent Study

今学期履修した講義は、最後のIndependent Study以外、全てレクチャー形式のもので、試験やレポートによって評価されるものがほとんどです。アメリカの大学の講義は予想通りハードで、慣れるまでに相当時間がかかったのは事実です。あり得ない量の課題の量と英語のリーディングに泣きそうにながらも8月、9月とかけてだいぶ自分なりのペースや力の入れ加減を理解し、うまく過ごせていると思います。それでは個別の講義に関して書かせていただきます。
・CEE472 Structural DynamicsⅠ
所謂、動力学というもので相当分厚い教科書を使って勉強しています。評価は中間試験・期末試験・宿題、という至って日本的な評価方法です。この講義、この大学のCivil Engineering and Environment Majorの大学院生の必修科目らしく、ほぼ大半が大学院生で、学部生は10人もいません。そんな中で学部生として奮闘しています。日本で学ぶとすれば、振動工学という分野になると思います。1自由度系から多自由度系における運動方程式をどう解くか、ということが講義の根幹にあたり、構造物の振動解析などを行います。宿題では数値解析ソフトのMatlabを利用する問題が多いのですが、イリノイ大学の学生はMatlabが無料で購入できるという特典があり、その恩恵を受けながら、大学院生の友人たちと協力しながら宿題と戦っております。
・ECE310 Digital Signal Processing
信号解析という分野にあたる講義です。フーリエ変換・Z変換を中心に、離散化された信号の解析やシステム、フィルターの設計について扱います。毎週の宿題に加え2週間に1回の1時間の試験があり、ヘビーな講義です。2人の教授が何週かおきに教えてくれるのですが、中国人の教授の英語が中国語にしか聞こえず、リスニングに大変苦労しています。アメリカ人の友人に聞いたところ、彼にとっても相当聞きづらいらしいのですが…。

・ENG310 Lecture in Engineering Entrepreneurship
こちらの講義はエンジニアリングに関する起業の講義です。履修生のうち半分ほどがビジネス専攻の学生なのが特徴でしょう。いわゆるIT起業をした人がプレゼンテーションをし、それを聞く講義です。あるときは現役のイリノイ大学1年生が来てプレゼンをしていましまた。彼は起業家支援財団から相当の資金を得たらしく、これから新しいサービスをローンチするということで非常にエキサイティングな学生で、本当に映画「ソーシャル・ネットワーク」の一部を垣間みたような気になりました。教授曰く、一応ビルゲイツにも声をかけているらしいのですが、いつ彼が来るかは未定だそうです…。

・SHS120 Children, Communication, & Language Ability
この講義はひとつくらい100番台の授業を履修してみよう、ということ(100番台は1年生が多いので)と、言語系の講義を以前から学んでみたいと思っていたので履修を決めました。教官曰く、この講義のフィールドとしてはPsycho Linguisticだそうです。子供がどうやって言語を学ぶのか、ということを中心に講義は進められます。バイリンガルの子供はどのようにしてバイリンガルになるのか?といったことが大変興味深かったです。また、他の学生は英語のネイティブスピーカーであり、英語の文法や単語は体系的に学んでいない一方で、私たち日本人は英語を体系的に学んでいるため、その違いから生まれる感覚の差も大変面白かったです。具体的には、「この単語はなんで名詞ってわかるの?」と聞かれるとアメリカ人は明確な説明ができないのですが、私ならば「前置詞があるから」だといった理由で答えることができますよね。そのような言語学的な観点の違いが非常に興味深いです。また、この講義が一番英語が大変です。ひたすら80分ほど先生がスライドを使って話し続けるのでキャッチアップするのに苦労しています。

最後のIndividual Studyというのは研究室での研究です。こちらに関しては次回のレポートにて詳しく述べさせていただきます。

<その他について>
アメリカに来てから初めての祝日のLabor Dayは大学が休みだったために、少し足を伸ばしてアイダホ・ワイオミング州に位置するイエローストーン国立公園に行って参りました。イエローストーンは火山地帯で、アメリカ初の国立公園です。とても硫黄の匂いが鼻をつきましたが日本の温泉地帯を少し思い出し、恋しくなったのも事実です。また、アイダホ州のState Fairなるものにも遊びにいきました。体に悪そうなアメリカンフードを食べながら競馬をしました。日本でしたことのない競馬をまさかアメリカでやることになるなど思いませんでしたし、こんなに惨敗するとも思っていませんでした(笑)
この他にも週末は友人にパーティに誘われたり、日本人同士で鍋をやったり、映画館に行ったり…と勉強以外も十分に楽しんでいます。

長々と書かせていただきましたが、すこぶる健康にアメリカでも過ごしております。これに換えてご支援、ご協力いただいている皆様はじめ、我々を送り出してくださったJICの皆様に向けての10月の報告とさせていただきます。今後ともよろしくお願い致します。